読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

マンガ

94. 『とくにある日々』1,2巻 自分達の発想と行動がいつだって毎日を特別に変える

約一か月ほど時間が空いてしまったが、生きています。 読んだら(なるべくすぐ)書くがモットーとは、逆に言えば読まなければ書かないわけで。つまり新作マンガを読んでいなかったのだ。 その理由は金欠と精神的多忙が重なったから。 余裕が出てきた先週に続巻…

93. 『駕籠真太郎作品集 都市とインフラストラクチャー』 空想力で練り上げられた町の集合体

我々の生活を豊かで便利にしてくれるアイデア商品。 ワンコインショップやホームセンター等に多いイメージだが、どれもありそうでなかったたった一工夫で既製品から劇的な変化を遂げている。日々案を出して試行錯誤する人には頭が上がらない。 創作分野も同…

92. 『鬼踊れ!!』1~3巻完結 伝統は守るべきものか、変化していくものなのか

中学校の体育でダンスが必修化されたのはもうずいぶん前のことだ。 私が中学生の時はまだ必修ではなかったものの、クラスごとに創作ダンスをしなければならない期間があった。 曲の選定はまあ良いとして、ネックとなるのはオリジナルの振付。 私はもちろんほ…

91. 『物質たちの夢』 ハサミの反乱と脳信仰と社会性

SF(Science Fiction)とは近未来の科学をベースにした創作物を指す。 って勝手に私が定義したので厳密には違うかもしれない。 遺伝子、ロケット、人工生物、そしてロボットや人工知能が100年以上前から小説で扱われ、世界初のSF映画『月世界旅行』を機に映画…

90. 『モモ艦長の秘密基地』1巻 自堕落で抜け目ないけど詰めが甘いベテラン艦長

拾ってきた段ボールとゴミの中からかき集めたガラクタで出来上がった秘密基地を小学生の頃に作った記憶がある。 公園の垣根の入り組んだ奥がぽっかりと空間になっていて、そこにそれらを詰め込んだ子供だけの内緒の部屋はテレビゲームができるわけじゃないし…

89. 『無限大の日々』 昆虫・蟻・幸運発生機……見て分かる重厚なSF短編集

最近触れたSFは何かと聞かれたら、漫画以外なら映画『TENET』くらい。 ――いや何年前だと言われそうだが、本格SFとなると2年前の映画しか浮かばないほど日頃SFというものを鑑賞することは少ないのだ。 そんな私でも楽しめるSFマンガを紹介する。

88. 『ハクメイとミコチ』1~11巻 小さな世界の当たり前の毎日が愛おしい

葉が落ち生き物の息遣いが少なくなる冬場だと感じにくいが例え街中でも足元を見れば自然豊かな世界が残っていたりする。 ここ数日は全国的に急激な春を通り越して初夏の陽気が到来。あっというまに冬眠から覚めた動物や昆虫が芽吹き始めの草花へやってきてい…

87. 『ホッピントッピン』 作者の真骨頂バイオレンス短編集

たびたび取り上げる短編集は同作者の多ジャンルを読める点が優れている。 デビュー前の作品から連載の合間に描いた毛色の異なる意欲作など、その広い可能性を感じ、「次はどんな話が来るんだろう」とワクワクさせてくれる。 我が家にも約20冊の短編集がある…

86. 『めんや』 反骨と相違満ちる若手の仮面職人譚

夏の風物詩の一つ。 日暮れの頃から路上や境内に立ち並びぶ屋台。人通りが増えて祭囃子を合図に、にわかに活気づいていく。 食べ物に金魚すくいと射的、そして大人気ヒーロー・ヒロインのお面。 面は人類が神に成るため、動物に成るため、他者に成るため生み…

85. 『あいうら』1~7巻完結 王道的女子高生日常群像劇

資本主義の弊害というか人類の飽くなき欲望の産物というか。 同類でありながら各社から製品化されても一定量売れるもの、という物が存在する。 供給側は売れるから相似の新作を作る。需要側は同種かつ新鮮さを得たいので買う。 この繰り返しはコスパがよく非…

84. 『まちカドまぞく』1~6巻 優しき心で皆を救う魔族の少女の成長譚

陰と陽、光と闇、善と悪、聖と邪…… 相反する物の組み合わせ。二体一対は相殺しあうことで平衡を保っている。 どちらか一方が強大でも脆弱でも成り立たない、曖昧で不安定な関係性はゆらゆら揺れて行ったり来たりしながら、けれど確かに硬く頑丈な絆となって…

83. 『アナーキー・イン・ザ・JK』 無秩序な会話が一度きりの青春を形作る

青春に良いイメージがあるかは人それぞれだろう。部活や友情を育んだ人と人と関わるのが苦手で鬱屈した日々を過ごした人もいる。 周囲全てを無視して熱中できるものがあれば別として、学生時代の思い出とはどんな友人がいたかに左右されると思う。 良い相互…

82. 『大科学少女』上下巻 あらゆる理系を楽しみ学べる部活漫画

一番学生に人気のある教科は何だろうか? 現役生には主要五教科のいずれかよりは副教科の方が好かれそうだ。 けれど体育は運動嫌いの子がいる。美術は絵が苦手な人もいる。音楽は音痴な人には苦痛かもしれない。家庭科も技術も、得意不得意を考慮すれば好き…

81. 『+チック姉さん』22巻 オカルト・化物・変人祭りなぶっ飛び漫画

テレビを中心に昨今声高に叫ばれるコンプライアンス。 時代にそぐわない表現は削がれ除去され、やがて全てが消えていくのだろうか。 その荒波はメディアだけに留まらず漫画・アニメ・小説・映画などあらゆる表現媒体に押し寄せている。表現の自由がいつまで…

80. 『スペシャル』1~4巻完結 異常が常の平穏の影に蔓延る不穏

世に名作映画は数あれど、鑑賞後に放心してしまった映画は少ない。 大して多くない映画遍歴を振り返って、5本あるかないか。衝撃度か感動が高いエンディングに絞られる。一般にも知られた作品ばかりだ。 漫画になるともっと少ない、気がする。 それは単に私…

79. 『放課後ていぼう日誌』10巻 伍島合宿編完結といつもの堤防

冬はアウトドアには厳しい季節。 『ゆるキャン△』に影響されて冬キャンプを始めた人も多いらしいが、私は虫も好きだし寒い方が嫌なので夏が待ち遠しい。 作中の夏を見ていると遠い海と山の音が聞こえるような気がする。 一部ネタバレあり

78. 『亜人ちゃんは語りたい』11巻完結 亜人と人の繊細な交流を描いた傑作

ここ最近紹介した作品には人の姿をベースにした人ではない者たちが活躍する話が多かった。 別に意図していたわけじゃないが、私の好みの一つなのかもしれない。 獣人やサキュバス、悪魔に人造人間などそういうキャラを総合して”亜人”と呼んだりする。 「亜」…

77. 『ゆ→あい』1~3巻完結 ゆーじょう以上れんあい未満な高校生たち

まっすぐ一途な気持ちで人を好きになったのは幼稚園が最初だったと記憶している。 6歳という幼児の感情なんて、と思われるかもしれないがその後小学5年生頃まで同じ人を好きだった事実は自分でも純粋だったなぁと回想してしまう。 「誰しも」と一括りに語っ…

76. 『レキヨミ』1~3巻完結 森住まいのケモミミ姉妹のハートフルバイオレンス

フィクションにおける獣人・ケモ耳キャラの発祥はいつだろう? 真面目な話をすれば、西洋の古代神話には半身半獣の神々や妖精などがごく普通に登場する。人間の想像力の源は身の回りの自然なので、動植物を参考に人と合体させるのは必然ともいえる。 日本な…

75. 『黄色い耳((胎教))』 ギャルと異形の新生物による生命の奇跡

我々人類にとって耳とはどんな存在か、考えたことはあるだろうか? 私はもちろん……考えたことがなかった。 広範囲の音を聞くために必要な身体部位であるだけじゃなく、形の違いから個人の識別もできるかもしれない。注目して見てみると十人十色、千差万別で…

74. 『ウィッチクラフトワークス EXTRA』1巻 2人の冒険とサブキャラ達の顛末

漫画が完結するとは一つの人生が終わることと同義だと思っている。 死闘の末に宿敵を倒しライバルと決着を着けヒロインと結ばれる。主人公は目標を達成して壮大な旅路が終わりを迎える。感動的な大団円のあとを読者が知ることはない。作者の空想の世界で彼ら…

73. 『アナモルフォシスの冥獣』 理外の作者のトリックに翻弄される

デスゲームものが流行り出したのはいつだったかと考えれば、あくまで個人的な回想に過ぎないが『GANTZ』実写映画が公開された2011年前後じゃないかと思う。 以降『神さまの言うとおり』(2011年3月号)『リアルアカウント』(2014年2月号)『ハカイジュウ』(2010…

72. 『ぬるめた』1~3巻 4人のJK(人造人間含む)が織りなすカオスコメディ

人が繁殖を伴わずに人を作り出す試みは古くから行われてきた。 カバラではゴーレム、中世後期の錬金術ではホムンクルスという人造生命の作成法が編み出された。残念ながら科学の発達によりその方法は否定されているが、一方で遺伝子工学、生命工学など各分野…

71. 『犬神博士』 高名な呪術師と邪悪な術師達の戦い

犬神とは呪術の一種だ。 一匹の犬を首まで地面に埋める。そしてギリギリ届かない位置に食事を置く。犬は飢えと渇きで必死に首を伸ばし続けてはそれらを満たせない苛立ちがやがて憎悪に変質する。数日間繰り返したのちに犬の首を刎ねると、その首は強力な呪物…

70. 『ハイスコアガール』1~10巻完結 ゲームを通して交錯する不器用男女の想い

高校時代、定期テストの最終日は解放感と時間的余裕もあって下校時にカラオケやゲームセンターへ行ったりしていた。 私はケチなこともあって友人のプレイを後ろから見ていることが多かったが、時には大してほしくない景品を求めてクレーンゲームに湯水のごと…

69. 『ご注文はうさぎですか?』1~9巻 愉快な店員に会える喫茶店と瀟洒で平和な街

深夜アニメを見るようになって早10年。 ここ数年は1クールにつき1~3本程度しか視聴していない。特に今季アニメは継続してるのは1本のみ。 個人的に漫画や小説以上に新作アニメを見続けるのは体力を使う。 新しい情報を脳に入れることが疲れる感覚があり、気…

68. 『おねぇちゃん日和』1, 2巻 真剣にふざける姉と仲良し妹の日々

あなたは日常生活でボケることはあるだろうか? 私は昔からツッコミだったのでボケるのは苦手だ。そもそも芸人でもない素人があからさまなボケをする人は――極たまにいるが、現実で堂々とやるのはお勧めしない。 もしもやりたいなら、この漫画を読んで勉強す…

67. 『僕は妖しいキミのもの』1巻 魔性の幼馴染に迫られ誘われ求愛される

いきなりでアレだが、世界には数えきれないほど多くの性的嗜好がある。 全ての事物に愛好者がいると思うほど人間の感性は多様性に満ちている。他の生物を考えるといささか奇妙なことだ。 生物学の観点で繁殖だけを考慮すれば、人間の場合、雌雄の番が効率よ…

66. 『〇本の住人』1~7巻完結 変な兄と真面目な妹の大切な物に囲まれた生活

世の中にはミニマリストという人達がいる。 身の回りの物をとにかく減らして最小限に抑えた暮らしを送る人をそう呼ぶが、私は逆に物に囲まれて生活している。整理整頓は割としているのでゴミはないがミニマリストから見ればさぞ息苦しい生活に思うだろう。 …

65. 『夜な夜な夜な』1巻 腐敗極める警察に立ち向かうは正義の怪盗一座

闇夜を駆け、私腹を肥やした悪党から金を奪い貧民にばら撒く。 義賊といえば日本なら石川五右衛門、西洋なら創作だかアルセーヌ・ルパンが思い浮かぶ。 怪盗は盗みを働くので当然犯罪者だ。現実にいればどんな人格者だろうと逮捕されて法で罰せられる。 だが…