5. 『トモダチ✕モンスター』1~3巻完結 絵柄と展開のギャップ
ギャップ好きの人は多い。
意外性はあればあるほど見た目と中身がイメージ通りの組み合わせだと得られない感情が生まれる化学反応である。ただし、テンプレの”不良が実は動物に優しい”はプラスのギャップだが”生徒会長が実はカンニングしていた”はマイナスのギャップとなる。
つまり何と何を組み合わせるかで数倍のプラスにもマイナスにも値が変化するかけ算なのだ。
なんとなくだが最近はギャップがより増えた気がする。あえてくだらないことを本気でやるとか、ふざけたものを商品化するとか、ギャップ利用法の一種だと思う。
意外性は新鮮味となり刺激物となる。人々は心と脳を動かす刺激をどんな形でもいいから求める。
正直に言おう。
『トモダチ✕モンスター』は打ち切りマンガである。
漫画アクション上で連載されていたが3巻で急完結している。連載本誌は未確認なので当時の詳細はわからないが、読めばわかる。
「ああ、この終わり方は打ち切られたんだな」と。
終盤の畳みかけが急テンポすぎる、打ち切りマンガ特有それだ。
漫画家にとって何より辛いのは自身の作品を満足いく形で終えられないことだと思う。漫画誌で連載する場合、どうしても定期的に人気順位の低い作品は後退させられてしまう運命にある。不本意ながら仕方ないことだ。漫画誌は商業誌なのだ。利益が出なければ雑誌そのものが廃刊してしまう。苦渋かもしれないが編集部の決断はなんら理不尽ではない。
そもそもこの漫画を知ったのはたまたまだった。
某サイトで「色々グロい」と紹介されていたのに目が留まり、全く知らない著者と作品だったので気になり中古で購入した。最終巻は2015年発売だったので、市場にはまだ存在するのかもしれないがタイミング的に新品は手に入らなかった。
小学男子の主人公はクラスに友達のいない寂しい子ども。ある日、学校の裏山から声が聞こえたのでそちらに行くと、しずく型の謎生物(1巻表紙)と出会う。戸惑う主人公だったが寂しかったこともあり成り行きで友達になる。このことが彼を過酷な戦いの日々へ巻き込むことになる……
ざっとあらすじはこんな感じである。
テーマとして「周囲に馴染めない孤独感」「正義とは何か」「友情の大切さ」あたりがあると思った。
主人公と”トモダチ”を襲う敵との生死をかけたバトル、”トモダチ”とは何なのか。
戦いの中で仲間と出会い別れ、主人公たちは成長する。王道のバトル漫画的展開が最後まで続く。
どれも別に悪くない、というより個人的には普通に楽しめた。
もちろん打ち切られたのもわかる。
王道とはつまるところありきたりな展開に陥りやすい。第一話のラストは衝撃的で掴みとしてよかったが、以降は死が身近に迫る世界なのに絵柄やモンスターと共に戦う某有名ゲーム的設定というギャップを上手く活かしきれず、かといってグロに振って鮮血シーン盛りだくさんなわけでもない。中途半端な感は否めない。
しかしこんな粗探しを始めたらキリがない。
素人の私が指摘するポイントなんてとっくの昔に編集者が口にしているし、作者も理解してるはずだ。そもそもどんな人気作にも矛盾点や減点対象が存在する。それにここでしょうもない不満を喋りたいわけではない。
なら何が言いたいかというと、どんな漫画も本当は面白いのだ。
厳しい連載会議を突破して掲載された作品が、一点すら面白味のない漫画な訳がない。必ず長所があり、個性があるのだ。
長所と短所の比率が人気作と打ち切り作で異なる。長所が多ければ多いほど面白いのは当たり前。けれど長所が少なくたって楽しめるはずなのだ。
要は打ち切り漫画も読者側の感性と見方次第で駄作か及第点作か平均作か変化するのである。
「上から目線で何言ってんだ」と言われるかもしれないが『トモダチ✕モンスター』は個人的には平均レベルだと思う。画風も入り込みやすく画面がストレスなく読みやすかった。
作者の乾良彦先生の他作品を調べてみた。本作より前にいくつか、本作後にも一つ漫画を描いていたようだ。いろんなジャンルと画風の差があり興味がわいた。
さらに調べると現在はTETSUO名義で漫画を連載をしていると本人のTwitterで確認した。別人が描いたとしか思えない画の違いに驚いた。
そのうち読んでみようと思う。