ムショで暮らしたい人はいない。
かと思いきやニュースを見ていると事件を起こした犯人が、
「刑務所に入りたかったからやった」
そんな供述をたまに耳にする。
理由は複数例あると思うが、おそらく多いのは衣食住に困らないからだろう。
たしかに刑務所内ならご飯は食べられるし服も支給される。雨風はしのげるし毎日ではないが風呂も入れる。生命の安全は保障されるのだ。危険な外の世界で暮らすより充実している、と感じる立場の人もいるだろう。
しかしその実態は? 受刑者はどんな毎日を過ごしているの?
わからないことだらけの獄中生活がわかる漫画がある。
可愛らしい絵柄のカワイイ女子ばかり登場する日常マンガが流行ってずいぶん経つ。その代表は主に芳文社のまんがタイムきらら系だと思うが、こちらは講談社かつ獄中生活を描いた漫画であり、テーマだけなら可愛いとは程遠い。
漫画はこんぱる先生とふじしまペポ先生の共同制作で草下シンヤ氏・雨宮氏が取材協力という形。共同制作がどう行われているかはわからないが、作画と原作のように分かれていると思われる。
主人公は一巻表紙の女性で大麻取締法違反・所持累犯の罪状で刑務所に収監される。入れられた部屋にはすでに3人の女性が生活していた。先輩受刑者たちに優しく、時に厳しく生活ルールを教わりながら明るく?刑期を過ごす話となっている。
彼女らの好みや風貌は一般社会の若い女性と変わりないが、会話内容は当然罪を犯した人の顔を時折見せる。たとえば主人公は比較的軽度の大麻中毒なので薬物界隈の専門用語がふとした瞬間に飛び出すこともしばしば。
広義の日常系漫画として本編を気楽に楽しめるのはもちろんだが、もう一つ面白いのが元受刑者の女性・雨宮氏による一話ごとに挟まれる閑話休題コラムだ。彼女の経験談が漫画の下敷きになっている。
受刑者の食事、睡眠、トイレ事情、入浴、散髪などなど塀の中といえど人間が必要な行動を如何なる制約の中行っているのか解説してくれる。具体的な説得力を持つ彼女の実体験はわかりやすくまとめられているので、そこだけでも読む価値あり。
たとえば本編でも言及されている風呂場の入口に敷かれた脱衣所のマットは皆飛び越えて出入りする。なぜかというと不衛生で踏むと水虫がうつるかららしい……
想像すると寒気がする。
このような雑学的知識も得られる漫画は割と好きだ。活字でも読むのも好きだが、自分が全く知らないジャンルだと想像しにくい場合もままある。
漫画なら噛み砕いた説明と一目でわかる画で読みやすい。値段的に手に取りやすいのも利点だ。
漫画は今も連載中なので3巻を楽しみにしている。