読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

11. 『ちおちゃんの通学路』1~9巻完結 愛すべきバカ達の行動記録

 普通に生活していて人に面と向かって「バカ」と言うのは、このご時世において小学生ですら許されない。最低で叱責、最悪で炎上して社会的死、のちに裁判沙汰である。

 

 人を侮辱することは倫理的にも法的にもNG。そんなことはわかっている。

 

 だがしかし漫画のキャラにならいくら言ってもいいだろう。しかもコメディ漫画のキャラならなおのこと、むしろ誉め言葉である。

 

 

ちおちゃんの通学路 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

 

 

 全9巻の本作はタイトル通り、女子高生・ちおちゃんこと三谷裳ちお通学をメインに描いたハチャメチャコメディである。クラスでの様子は描かれず、ほぼ学外の出来事で構成されている徹底ぶりには感心する。

 

 

 ――通学をメインに話が書けるのか?

と初めて作品に触れた時の私もそう思っていた。

 

 私は2018年に放送されていたテレビアニメ版をリアルタイムで視聴していた。事前情報はタイトルのみ。結果は非常に面白かった

 それはひとえにキャラを演じる声優さんの力が大きいと思っていた。特にちお役の大空直美さんと親友の野々村真奈菜役の小見川千秋さんの演技は素晴らしかった。大空さんはそれまで『アイドルマスターシンデレラガールズ』の緒方智恵理の印象しかなかったため、衝撃を受けた。

「こんな役もできるのか」と。

 

 

 しかし今回数年越しに原作漫画を読んで考えを改めた。いや初めからわかっていたことではあったのだが、ストーリーがちゃんと面白いのである。

 

 本作の笑いは少々がある。それも多方面に対する毒だ。

 

 主人公らの発言と行動を現代社会に丸々反映させたら累積何犯になるかわからない。現代社会を舞台にした通学マンガなのに主人公たちの行動はぶっ飛んでいる。

 

 たとえばゲーム脳のちおは友人や警官相手に日々妄想訓練している近接格闘術や暗殺技などを繰りだしたり真奈菜はすぐちおを陥れたり見捨てようとする。仲良くなる陸上部の純粋故に変人だ。

 生き方が泥臭かったり喜怒哀楽の激しさといった、各キャラの味の濃い人間味が笑いのポイントになっている。

 

 もう一つ感じたのは妙なリアルさだ。

 創作とはいうものの何か物語を作るときに完全な0から話を生み出すのは不可能だ。作り手は実体験や聞いた話なんかを元に話を生み出す。今作なら通学時の友人との会話や遊び、些細なトラブルはおそらく作者の経験談も混ざっているはずだ。

 

 さらにリアルなのはちおが日々徹夜するPCゲームのシーン。まず実在するゲームがいくつも出てくる。タイトルこそ明示されない場合もあるが、登場するのは『アサシンクリード』シリーズ、『PAYDAY』、『PUBG』など、あまり多くゲームをしない私でもわかるような有名タイトルばかり。かと思えば知ってる人にはわかるような海外ゲームも出てくる。

 またゲーム専門用語やオンラインプレイの特徴と腹立つ点、海外ゲームを日本で遊ぶ時の注意点、『Steam』という大手ゲーム販売プラットホームのセールの話にマイナーゲーム雑誌に至るまで、ゲームへの愛と知識が溢れている

 

 作者の川崎直孝先生は相当なゲーマーなのだろう。

 

 

 漫画が完結してからはや4年ほど経つ。もっと早くに読んでおけばよかったと過去を悔やみ、もっと続きが読みたかったと重ねて後悔した。

 

 川崎先生はTwitterでオリジナル漫画を投稿しており、たまに拝見するがそちらも完成度が高く面白い。中にはちょっとえっちな話もあるため苦手な人は一応注意(Amazonでそれらのまとめが無料で全話読める)