読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

16. 『ショートショートショートさん』 どこかにいる大人女性の日々を描く

 現実世界を生きる我々は日々の疲れや退屈から逃げるように映画や漫画などフィクションの世界へ身を投じる。

 

 そうした簡易的な現実逃避は生きる力にもなる。

 

 けれど時に求めるのは剣と魔法とドラゴンな非現実ではなく超絶タイプな美形との大恋愛でもなく、過去現在のどこかにあっただろう日常なのはなぜだろうか。

 

 

ショートショートショートさん (ビームコミックス)

 

 カノンノ先生の『ショートショートショートさん』はその通り短編漫画集――というのもあるが、主人公(表紙左の女性)が髪を短く切ったところから始まる=ショート

(カット)さんという意味もある。と推測している。

 

 あとがきを見るまで知らなかったが、元々は作者がTwitterにあげていたマンガを編集者が単行本話を持ち掛けて発売されたものらしい。

 

 

 私はタイトル&表紙買いした。

 女性の絵が可愛い。質感が伝わるような筆致で好きなタイプだ。

 

 内容はショートさんの日常を描いたものだ。明言されていないが彼女はおそらく20代後半。周囲が結婚や仕事に追われる中、少しゆったりした暮らしの自分は取り残されているような感覚に陥る。特に恋愛面で仲のいい友人(表紙右)に定期的に相談している。

 

 彼女の生活を見ているとどことなく共感を覚える描写が多い。私自身、遅い時間間隔で生きているため周囲の友人たちと比べて時折思い悩むことも少なくない。

 

 ショートさんは悩んでも少し褒められたら機嫌がよくなったり、いい友人たちのおかげで楽しく暮らしている。

 日常系の中でも現代社会ベースなフィクションでありながら作者の過去の経験や耳にした話が元になっているであろうリアルな細部に惹かれる。

 

 

 ブログやSNSで他人のプライベートや考え方を覗き見るのと同じで、自分とは異なるものに触れたいという人間が持つ根源的欲求の一つを満たせるものだと思う。

 

 

 本作シリーズは現在3作まで出ている。

 本棚にいくつも入っている日常漫画は今後も増えていくだろう。