読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

19. 『丸井諒子作品集 竜のかわいい七つの子』 自然への敬意に幻想を組み込んだ考えさせられる物語

 短編集が続いているが、積んだままの長編作は一度読み出すと続きが気になって他事を後回しにしてしまうので読むこと自体を後回しにしてしまう。

 

 短編集なら一話完結で多様な話を読めるお得感もあって少し漫画を読みたいときに重宝する。

 

 というわけで今回も一押しの短編集だ。

 

 

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (HARTA COMIX)

 

 丸井諒子先生の作品は3作目になる。

 

 初めて読んだのは『ひきだしにテラリウム』だった。2作目は『竜の学校は山の上』だった。

 

 そして本作竜のかわいい七つの子は既読3冊のうち短編集としては2番目に発売されたものになる。ちなみに『ひきだし~』が3作目、『竜の学校~』が1作目である。

 

 内容は多種多様、時代設定もバラバラで作品の幅が広い。

 

 共通点はファンタジー要素と自然要素を多く取り入れている点だ。

 

 短編集2作に”竜”と入っていることからもわかるが、竜・ドラゴンは度々作品の主題として登場する。また河川開発や生物と共存など自然環境を意識したテーマが取り入れられている。

 

 

 竜を中心とした人魚・ケンタウロスなどファンタジー、空想上の動物は我々の生きる現実社会の問題提起のためにうまく用いられている。話の構成力が素晴らしくて尊敬する

 

 丁寧に提示される人と彼ら幻獣や動物の関係性、人々の暮らしの細やかな描写、主人公や敵対する人物達の移ろいゆく心理の表現力、作者の自然に対する畏敬の念、人の在り方とこれからどう生きればいいのか……そんなことまでマンガから考えさせられる。

 

 フィクションでありながら確かな説得力を持つ作品群である。

 

 

 丸井先生といえば現在連載中のダンジョン飯で知られていると思う。あいにく私は未読なので作品の詳細は知らないが、発売巻は12巻であり、これら短編と同じく非常に面白いのだろう。

 

 

 また本棚が埋まってしまいそうだ。