読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

21. 『僕が死ぬだけの百物語』1~3巻 小学生が”何か”に語る恐怖怪談

 出版社を気にして購入する人はいるのだろうか。

 

 版元ごとに取り扱う本には傾向があるため興味あるジャンルを出版していれば買うというのが一般的ではないだろうか。

 

 私も本を多く買うようになってから各出版社を知ったのだが、本棚をふと見た時に「この出版社の本、結構持ってるな」と思う程度である。

 

 漫画も同じく。しかし偏りはあるなと思う。たとえばサンデー系はあまり手元にない気がする。

 

 

僕が死ぬだけの百物語(1) (サンデーうぇぶりコミックス)

 

 的野アンジ先生の『僕が死ぬだけの百物語』小学生男子が自室で「何か」へ向けて語る百物語を描いたオムニバス漫画である。当然ホラーオンリー。

 感想に関係ないが、タイトルを書くときに『僕だけが死ぬ百物語』と何度も間違えてしまうのは何故だろう、何かの呪いかもしれない。

 単純に私が僕だけがいない街に語感を引っ張られているだけである。

 

 

 オムニバスだが話始める前と語り終えた後に語り手の生活が垣間見える形式で、そこで語り手である小学生の秘密が見え隠れするのが肝になる。

 

 百物語なのでおそらく100話まで続くと思われるが、語り手の謎が気になるところ。なぜ百物語をするのか、誰に向かって語っているのか(描写としてはコマの正面=読者に向かって語っている)、家族との関係、夜に現れるモノの正体……怪談話以上にこちら方が本編とさえ思える。

 

 

 語られる話はいずれも現代を舞台にした話。心霊系のオチを中心に人が怖いサイコ系、化物系、都市伝説系の話がある。いずれも一話完結なのでサクッと読めるのが良い。

 

 ホラーレベルでいうと、慣れた人であれば楽しく読める程である。

 けれど線が細い画のため密度の濃いホラーというよりライトなホラーで、表紙のインパクトの割には苦手な人でも恐怖をエンタメにできると思う。

 なのでホラーマンガ入門編にどうぞ。

 

 

 ひどく個人的な話をする。

 以前から趣味で短編ホラー小説を書いているのだが、そのせいもあってホラーコンテンツに対する内心の評価は非常に厳しくなってしまう。

 

 自作の小説は文章力からして拙作なのに商業作品に対して上から見てしまうのはよろしくないと思いつつも悪癖・負けず嫌いが発動してしまう。それに対して自己嫌悪気味になるのもよくないなと思い、結局負の螺旋から逃げられなくなってしまうのだ。

 

 サイドバーのリンクから私の小説ページに飛べるので、暇で仕方ない人は読んでみてください。100話ありますがどこから読んでも問題ありません

 

 

 ホラーをたくさん読むのも好きであり自作の参考にするためでもある。

 ホラーは他のジャンル以上にパターンがかなりなくなっているように思う。過去の傑作以上の斬新で身の毛もよだつ最新作品にはまず巡り合わない。 

 そんな中でも意外と現在多くのホラーマンガが連載・発売されているのはすごい事実だと思う。

 

 ネット社会、SNS全盛の時代に若者を中心として案外需要があるコンテンツに復活しつつあるのかもしれない。

 斬新さな恐怖、目新しさよりも古典的・王道的ホラーが過去を知らない人にとっては最初のホラーとなり、文句を垂れたり厳しい批評をするのは玄人気取りいい歳した人だけなのかもしれない。

 

 

 

 ――無駄に毒づいてしまったが、本作には何ら関係のない話なので悪しからず。

 

 『僕が死ぬだけの百物語』最新4巻はまだ未読なので近いうちに読んでみたい。

 

 続きが気になる、それすなわち面白い作品に決まっているのだから