読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

22. 『ときめきのいけにえ』1, 2巻 作者初の長編ホラー×ラブコメ

 ここに書く漫画・本は直近で読み終えたものを書くか、過去を思い出して書くかの二択なのだが作者被りは意識的に避けていた。

 

 単純に書くネタとして幅を持たせるために異なる著作者のものを選んできたのだが、同作者をよく読む者としては書かないわけにはいかない。

 

 

 というわけで今回は初の2回目作者になる。

 

 

 

ときめきのいけにえ(1) (月刊少年マガジンR)

 

 下記の投稿と同じ作者うぐいす祥子先生の長編作で3巻まで発売されている。

 

natu-comic.hatenablog.com

 

 漫画家を目指しているが陰キャな女子高生の主人公がとある出来事をきっかけにクラス一カッコいいが頭からっぽなヒーローに告白されてしまう、とあらすじだけなら本当に純粋ラブコメな訳だが、中身はホラーである。

 画面の柔らかい質感の描線とひらがな表記のタイトルに騙されてはいけない。

 

 しかし作者お得意のグロ描写はあるものの内容自体は変則的なラブコメと言って差し支えなく、全体的な要素も半々といったところだった。

 

 仲良くなろうと頻繁に話しかけてくるヒーローとの恋愛が脳裏にちらつき心動かされるが『他人と深く関わるな』という家訓により諦める主人公の葛藤、特殊な家に生まれてしまったが故に逃れられない運命が話のホラー部分に大きく関わってくる。3巻を早く読みたくなってしまう。

 

 

 ちなみに1、2巻のあとがきで語られているが、少年誌掲載でありながら少女漫画としてラブコメを描こうというひねくれた逆転の発想で、数年前に発表済み未執筆だった同人誌ネタを復活させ執筆内容が決まったそうだ。なんとも変わった経緯である。

 

 

 こうして同一作者の作品に複数触れるとその趣向はやはりよくわかるものだ。

 うぐいす先生はホラーの中でも恐らくスプラッタ―・サイコ・黒魔術などのキーワードが好みではないだろうか。特に他のホラーマンガにはあまり登場しない黒魔術要素は別作フロイトシュテインの双子』には主題の一つとして、また『死人の声をきくがよい』にもたびたび取り入れられる頻出要素だ。

 

 考察の真似事は私の不得意分野なので下手に手を出したくないが、直接でなく作品を通して間接的に作者を知れる(知った気になれる)のはとても心地よい。

 

 これまた個人的な趣味だが、漫画家に限らず好きな芸術家や著名人などの精神性や人格に関わるプライベートな部分は積極的に知りたいと思わないむしろ一生知らなくてもいいとさえ思っている。ただし偶然知ってしまってもショックを受けることはほとんどない。

 

 これらの理由を言語化するのは難しい。しかし「熱烈に好きな人ほど遠い存在であってほしい。だから近づくと冷めてしまう」という”カエル化現象”の一種にも思える

 私には”推し”と胸張って言えるほど愛する著名人はいないが、感覚としては上記のそれが近しい。同じ思いの人は性別年代問わず広くいると思う。

 

 

 

 最後に変な話になってしまったが、ひとまず続きを読んで物語の結末を見たいと思う。