読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

30. 『ウツロボロス』 目を背けたくなるほど危険度高なショッキングホラー

 ネットから世に出ていく著名人やクリエーターは2000年初頭から年々増えていると思う。

 

 漫画界も電子書籍の波からwebコミック誌の台頭、SNSの浸透によって次々と新人が発掘されていった。一般人が自由に表現できる場としてネットは大きな受け皿として機能している。

 

 それはアンダーグラウンドな才能が表と接する時代になったともいえる。

 

 

ウツロボロス (リイドカフェコミックス)

 

『ウツロボロス』は度々ブログに登場するホラー短編集の大判コミックだ。

 

 作者は氏賀Y太先生。読み方がやや特殊だがひらがなにすると「うじが わいた」と読む。

……パンチの効いたペンネームだが、作品も負けず劣らずインパクト大だ。

 

 私のお気に入りかつ最もヤバかったのは一話目だった。

 

 宇宙から謎の逆三角錐が突然世界中の人の頭上をロックオンしてくる事案が発生する。狙われた人は身動きが取れないまま数日間をその場で過ごすことになり、ゆっくり降下してくる逆三角錐がついには狙いの人の頭頂部に突き刺さり死に至る。数々の対策が練られたが絶対に回避防御不可能だとわかると人々の関心は薄れ、狙われた人は「運が悪い人」程度に思われ見世物扱いされる始末……

 

 この話を読んだときの衝撃は凄まじいものだった。理不尽・悲劇的・グロテスクな展開かつ斬新な設定が光る。並みの作家ではないと直感した。

 

 他の話にも共通するのが理不尽さ。主人公が不憫にも巻き込まれる災害的暴力が作品の恐怖の核となっている。ストーリーの起承転結はあるが、説明より設定と展開で押し通すような感じが好きだ。

 

 

 

 ネット上で活動していたらしい作者だが商業ベースで発売されている単行本は現在これ一冊のみ(だと思う)。

 

 

 別作をぜひとも早く読んでみたい。