読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

44. 『放課後ていぼう日誌』9巻 大物狙いの夜釣りで主人公の成長を感じる

 素人から玄人までのめり込むほどの趣味に会える人は果たしてどれほどいるだろう。

 

 趣味がなく休日をダラダラ過ごしてしまう人も多々いる中、何であれ奇跡的な確率で巡り合った人は確実に幸運の持ち主だ。

 

 

 たとえ印象が悪くても何事も挑戦してみれば180度考え方が変わるかもしれない。

 

 

 

放課後ていぼう日誌 9 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

 

 小坂泰之先生の『放課後ていぼう日誌』はそんな大切なことを教えてくれる。

 

 生き物が大の苦手な女子高生・鶴木は高校入学を機に父の実家のある海辺の街へ引っ越しした。田舎町で退屈するかと思いきや、偶然防波堤での年上女子高生との出会いが彼女をていぼう部入部、そして”釣り”の世界へ半ば強制的に引きずり込むきっかけになろうとは思ってもいなかった……

 

 

 本作は釣りの経験がないどころか生物嫌いの主人公が高校の”ていぼう部”に入ったことで日常と心情が大きく変化する釣りマンガだ。

 現在9巻まで発売中でアニメ化もされた。私もアニメのリアタイ視聴を機に原作を読み始めあっさりハマった。

 

 

 魅力はなんといっても初心者から始める釣り方講座のようなわかりやすい内容だ。

 竿、糸、リール、針、各種仕掛けの説明、魚の釣り方、釣り人のマナー、魚の調理法まで釣り知識を自然な組み込み方で描いているため釣り未経験の読者も本作さえ読めば釣りに行けるくらい充実した内容となっている。作者の知識量も釣り玄人でも楽しめるレベルだと思う。

 釣りゴミ問題や救命道具の使用法の回もあり、いかに作者が釣りに対して丁寧な気持ちで向き合っているかがよくわかる。細やかな気配りが素晴らしい。

 

 個性豊かなキャラクターの表情がコロコロ変わるのも可愛らしくて好きなポイント。特に主人公とその親友・夏海は感情が顔に出やすいタイプで大変かわいい

 アニメ版も初めから全員声に違和感がなかった。起用声優は若手と中堅、ベテランという感じだったがキャラにぴったりで他のイメージが全くできない程だ。特に部長の声九州の方言かつ気だるげなしゃべり方が非常に自然な演技で本人そのものに思えた。

 

 

 9巻は引き続き夏休みの離島編で初の夜釣り回やクエ釣りやキャンプ回の序章が掲載されている。

 夜釣りの大物狙いでは主人公の成長ぶりがよくわかるシーンがあって勝手に嬉しくなってしまった。

 

 9巻最終話の海から離れてのキャンプはまさかの食材登場で、次巻は釣りとは違った角度の話が楽しめそうだ。

 

 

 私も年一は釣りに行くのだが今年は一度も行けなかった。

 

 読み返したら釣り欲が高まってしまったが、冬の海は厳しい。ていぼう部と同じ真夏の海で糸を垂らすのを想像して来夏に期待したい。