48. 『くーねるまるた ぬーぼ』9巻 季節と友人と街と美味しいものを食べる
食事を一番の趣味にしている人はさぞ幸せなことだろう。
毎日基本3食、もしくはそれ以上の楽しみが確約されているのだから心身ともに日々の活力になっている。逆に食を損ねればテンションもモチベーションもだだ下がりな訳だが……
生きることに不可欠な食をただの習慣としてしまうのはもったいない!
そう感じさせてくれるマンガがある。
先日、高尾じんぐ先生の『くーねるまるた ぬーぼ』の9巻を読んだ。
元々『くーねるまるた』という作品があり、その続編で第二部的な作品が本作になる。
ポルトガルからの留学生・マルタが大好きな日本で暮らしながら知り合った数多くの人々と交流したり各地を訪れたり家でご飯を作ったり、読者が日常と食の良さを再発見するマンガだ。タイトルはつまり”食う寝るマルタ”という意味。
前作の終盤色々あったマルタさんはそのまま日本に住むことになり知り合いのお店で働きながら、日本のアニメマンガ好きな妹と同居している。
話には必ず一つメインとなる料理品が登場する。多くはマルタや友人たちの手作りだが、回によって出先の飲食店のものも登場する。
東京を中心とした話で、実在の場所が数多く登場するほか、大きな特徴の一つに文学作品のゆかりの地が定期的に話のメインテーマとして描かれる。マルタの興味に由来するのだが、文豪や名作のちょっとした話を知れて得した気分にもなれる。
料理については以前書いた『衛宮さんちの今日のごはん』と同じく作中で調理過程を描きながら作り方レシピもしっかり言葉で説明されており実践性がある。
幸せ様な顔でご飯を食べる姿はこちらもほっこりした気分になれる。祖国ポルトガルの家庭料理や伝統的料理も頻繁に登場し、主人公と日本との繋がりも意識される。
日本とポルトガルの関係といえば戦国時代の南蛮貿易によく知られ、種子島の鉄砲伝来もポルトガルの船によるものだ。宣教師の来日がキリスト教をもたらし文化面で良くも悪くも大きな影響があった。今日伝わる外来語の中にもポルトガル語由来のものは数多い。
作者はそのあたりの関係から主人公をポルトガル出身者にしたのではないだろうか?まあいつもの勝手な推測なんだけれど。
誰しも憧れる、好きなものと好きな人に囲まれて好きなことをして生きていく。彼女の人望と努力がなせる奇跡的な環境を私が手に入れるのはいささか難題過ぎる。
仕方ないので今日もだらだら食べて寝て生きていくしかない。がそれも悪くないとマルタさんは思わせてくれる。