読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

50. 『南くんの恋人』 丁寧に大切に触れなければならない

 休みも挟みつつ50回目。一度更新が途切れると途端にやる気がなくなる生粋の三日坊主タイプな私だがよく続いていると褒めたい。

 

 何かを意識して継続している人は案外多くないんじゃないかと思う。いろんな理由をつけて諦めたり止めてしまったり、そして自己嫌悪する経験は嫌なのに何度も何度も繰り返してしまう。

 

 

 

 以下ネタバレ注意!

 

 

新装オリジナル版 南くんの恋人

 

 内田春菊先生の南くんの恋人は原作よりドラマ視聴者の方が多いのではないだろうか。

 何度かドラマ化され、キャストも結構豪華だったように思う。あいにく私はいずれのドラマ版も未視聴なので詳細不明だが作品名は以前から知っていたため原作を手に入れ読んだ。

 

 主人公こと高校生の南くんの恋人・ちよみがある日突然手のひらサイズに小さくなってしまう。以降彼の部屋で彼にお世話をしてもらいながら皆に隠れて生活することになる。小さくなった彼女も体のサイズ以外は年相応の女の子。恋人との複雑な同居生活はお互い様々な問題を一つずつ解決しながら進んでいく。

 

 

 無理やりジャンルを分けるなら恋愛ものというより青春マンガだろうか。それもゆるい絵柄の割にシビアでリアルなお話だった。

 ちよみはちゃんと生理が来るし、お互い年頃の男女だからしたいこともあるがサイズ差が大きな壁となる。自由に外出できないちよみは外の世界の様子を知れないうえ、わずかな衝撃や高さが命の危険になる。

 登場人物はメインの2人以外はあまり出ない。学校の女子が南くんと接触し浮気しそうになったりもした。現実的な高校生男子の心理描写が生々しい

 

 喧嘩することもあるがちよみにはもはや南くんしか頼れる人がいない。彼もそれを理解して大変だと思いつつもなるべく真摯に彼女と向き合う。

 

 そんな生活にも慣れてきて、2人は旅行に行くことになる。初めての2人旅。本来なら手を繋いで堂々とデートができるが他人から見れば彼一人の旅だ。だとしても退屈で見飽きた彼の部屋に籠り続けるより何倍も楽しかった。

 

 旅先で道沿いを歩いていた時、運転を誤った車に追突され2人は崖下に転落する。全身怪我を負った南くんはポケットにいたちよみがいないことに気づき辺りを探す。

……見つけたのは既に息のないちよみだった。

 

 帰ってきた彼はちよみを土に埋めて墓を作った。

 

 

 

 急転直下の最終回喪失感が凄まじく読後はぐるぐると思考が巡ってしまった

 

 まさかこんな終わり方をするなんて全く思っていなかった。

 いやたしかにそれ以前の話の描き方からしてハッピーエンドとは思っていなかったがあまりにもあっけなかったため静かな衝撃を受けた

 

 でも悪い話だとは思わなかった。バッドエンドと一言で言える話でもない。どうやら発表時は賛否両論だったらしいが、私は作者至上主義なので作者の想い・考えの元描かれた描写なら文句は一つもない

 

 意味も原因もわからず小型化した現象が突然治るわけもなく、その謎を追及する話では最初からなかった。ならば終わりも突然やってきておかしくない。悲しむ気持ちは強く持ってしまうがファンタジックな物語に浸っていた読者と主人公は最後に現実へ戻される。夢はいつか覚めてなければならないのだ。

 

 

 

 実は『ガロ』関係で知った内田先生だったが、他作品は未読なのでそのうちどれか手を出してみたい。

 

 でも次はもう少し救いを求めてしまうのは我がままだろうか。