53. 『まほろばきっさ』1~3巻完結 街の片隅にマイペースメイドの喫茶店
メイド喫茶が流行ったのは何年前だったか。
10年以上前、2000年代頃にアキバ系かつオタク文化の一つとして隆盛したのが遠い過去に思える。秋葉原には2,3回しか行ったことないが街頭にメイド服姿の客引きが立っていた光景はすっかり歴史の一ページになってしまった。コロナ禍直前に訪れた際は街ごと様変わりしていて大して思い入れがないのに物悲しい思いを抱いた。
1人でメイド喫茶に行く勇気を私は持ち合わせていないが、それならばマンガで代替しよう。
tugeneko先生の『まほろばきっさ』はイギリスからメイド志望の女性が使われなくなった喫茶店を再利用して店長として働き始めるメイド喫茶コメディだ。
tugeneko先生の作品は以前↓書いたことがある。本作は『上野さん~』きっかけで購入した漫画だ。
私は知らなかったのだが”まほろば”という言葉は古語の一つで「素晴らしい場所」みたいな意味合いらしい。現代風に言い換えれば『素敵な喫茶店』という感じだろうか。
内容は個性豊かなメイド女子たちを楽しむ話になっている。難しい要素はなく、何も気にせず読めるマンガだ。
ネタやキャラクターはのちの『上野さん~』に通ずるものがある。ただし比較すると下ネタは控えめだ。
人物に陰影を用いないフラットな画風もこの頃から変わらず、セリフも適量でスッキリした画面は整頓された本棚のように見やすい。イラストチックなキャラの可愛さもピカイチ。3巻までしかないのが惜しい。
3巻から登場するライバル喫茶店の新キャラ達の出番がもっと欲しかったなと読み終わってから思う。
日常系に分類されるが独特なテンション、会話テンポはシンプルなコメディというより少しシュールなギャグの印象もある。まあ細かいことなんて何でもいいのだが……
全体的にネタもわかりやすくて初心者?に優しい作りもいい。味の濃い中華料理ではなく出汁を効かせた和食料理のイメージだろうか。中華と交互に食べれば食べ飽きることのない無限ループの出来上がりだ。
よくわからない例えをいくつも書いてしまったがこんなところだろう。
一作品で面白いキャラを考えられるのは才能であり努力の賜物だと思うが、コメディを書く上で必須のスキルでもある。
作家業は知識と持ち物を消費していくジリ貧になる商売なのだからインプットの重要性は言わずもがな、作者を尊敬してしまう。
私も頑張ろうと漫画を読むたびにそう思う。