56. 『新・血潜り林檎と金魚鉢男』1, 2巻完結 雨天の吸血鬼に立ち向かう少年少女のその後
連載中でまだ巻数が増えるマンガと完結してもう巻数が決定しているマンガ、どちらいいだろう。
新しいものを読みたい人は前者、最終回まで一気に読みたい人は後者を選ぶだろう。私は、昔は現行作品の方が好きだったが今は過去作を手に取る頻度が増えた。
間が空くと話の続きがうろ覚えで読み返さないといけなくなるので、全巻あると非常に助かる。
一部ネタバレ注意
以前書いた阿部洋一先生の『血潜り林檎と金魚鉢男』の続編、タイトルに”新”がついている。
実は前作は明確に続きがあるていでいったん最終回を迎えていた。それから時間を置き出版社が変わって世に出されたのが本作になる。
血潜りの本部が何者かに襲われたところから物語が始まる。主人公一行は事件の犯人を捜す一方で攫われた仲間の行方を追う。
血潜り臨時本部は残った研修生たちが急いで訓練を進める。そんな中で金魚鉢男の殺害を試みる血潜りの単独行動でさらなる混乱が発生。金魚鉢男をおびき出すために主人公の同級生が捕まる……
数々のピンチの末、金魚鉢男の頭部の”金魚鉢”が割れ、中からこれまで吸ってきた莫大な血液が放出。巨人の形となり町になだれ込み飲み込まれた人が全て金魚になってしまう。
この事態を解決するために林檎がある決断をする。
終わり方はどちらかといえばハッピーエンドと言えるがそんな単純な話ではなかった。事態がすべて解決するわけではなく妥協と諦め、腹をくくった覚悟があって迎える最終話は何とも言えない気持ちになる。
巻末のあとがきを読むと、紆余曲折を経て描ききった作者は続編を執筆できたこと、作品を完結させることができて感謝を述べる一方で完全な理想形で終われなかったことを悔いていた。個人的には充分な大団円に思えたのだが、作者の考えていた描けなかった話が気になる。
ともあれやはり完結できたことは後追いの読者としても嬉しいものだ。打ち切りのまま続編も無しの作品が世には万と溢れている。作者に思い入れと気力さえあればネットや同人でもいいので続きを描いてほしい作品はいくつもある。
創作と商売はなかなかうまくかみ合わない時がある。需要がなければ描けないし世に送っても売れなければ早々に退場していく。世に出せただけでも御の字かもしれないが、それでは生活できない。世知辛いが元々そういう世界なのだ。
まだ作者の他作品で読めていないものはいくつもあるので追々読んでいきたい。