読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

58. 『ゆるゆり』22巻特装版 変わらないけど少しずつ変化していくキャラクター

「百合」とは植物のユリを指す言葉だが、意外と古くから女性同士の関係を意味する隠語として使われてきた。反対に男性同士だと「薔薇」というがそれぞれの由来は良く知らない。

 

 アニメ漫画に触れる皆さんならまずご存じにことだとは思うので既に隠語ではなくなってしまったが、語感だけでもどことなく意味や雰囲気が伝わる素晴らしい表現だと思う。

 

 ならばそれがタイトルに用いられればキャッチ―でわかりやすいものになるのは明白だ。

 

 

ゆるゆり (22) 特装版 (百合姫コミックス)

 

 なもり先生のゆるゆりは10年以上の長期連載が続く人気作品だ。

 何度もアニメ化され掲載紙百合姫知名度の上昇に大きく貢献したのではないだろうか。

 

 話は女子中学校が舞台。キャラも影も薄いのがキャラな主人公赤座あかりとその友人・先輩4人の学校未公認部活・ごらく部が中心のコメディ+少し百合要素なマンガだ。

 

 タイトルの『ゆるゆり』とは「緩い百合」のことで恋愛主軸なガチの百合漫画ではないという証。

 

 しかしこのタイトルのせいで私は長らく存在を知りながらも手に取ることはなかった。

 

 昨今の世界的ムーブメントに配慮しなくても私自身はいずれの恋愛関係もご自由にがモットーなのだが、実を言うとフィクション、とりわけアニメ漫画における同性愛表現には何故か抵抗があった語弊があると困るが、嫌いではなく苦手という方が近い。特に百合要素が主軸じゃないのにその要素を入れている作品を見ると何かモヤっとしてしまう「わざわざその表現いるかな?」と感じてしまうのだ。

 

 だが本作のアニメを視聴してこれまで見なかったことを悔やんだ。

 コメディとしてしっかり面白いのだ。百合要素はサブカル慣れしていれば全く気にならない程度しかなく、ちゃんとキャラクターの個性を生かした関係性と話作りがなされている。

 22巻も続けているのになお新しい展開と話を作り続けられる作者の努力と力量は凄まじい

 

 

 去年慌てて買い集めた既刊は全て面白く何度でも読み返せる。アニメも3クール+劇場版を繰り返し観た。

 最新巻も変わらない面白さはもちろん、あかりとちなつの過去についての話なんかはとても良かった。

 

 特装版を購入したので特典小冊子にも目を通した。

 今回は主人公たちの姉たちの高校時代の話。これまで明らかになっていなかった過去の知られざる出来事が描かれたもので、特典にふさわしい内容だった。

 

 

 惜しまれるのは刊行スピードが年1冊なこと。こればっかりは仕方ない問題なのだが、あと一年待つことを考えると先が長い。

 

 

 本作も繰り返し読んで何度も笑おうと思う。