66. 『〇本の住人』1~7巻完結 変な兄と真面目な妹の大切な物に囲まれた生活
世の中にはミニマリストという人達がいる。
身の回りの物をとにかく減らして最小限に抑えた暮らしを送る人をそう呼ぶが、私は逆に物に囲まれて生活している。整理整頓は割としているのでゴミはないがミニマリストから見ればさぞ息苦しい生活に思うだろう。
物を集めるならきちんと飾るなり仕分けするなりで大事に保管しておきたい。ただし部屋の広さを超えて集めればもはや整理など不可能となってしまう。何事も限度は大切だ。ましてや家計を圧迫するなどあってはいけない。現実ならば。
kashmir先生の『〇本の住人』は一言でいうなら王道の日常系マンガだ。
個性的な作風で知られる絵本作家の兄と二人暮らしの小学生の妹は日々部屋を占領していく兄のオタクグッズに辟易していた。そんな彼女の家にはクラスメイトや編集、教師までが訪れ、平凡だがどこか奇抜な毎日を送るのだった……
タイトルの「〇」は兄の職でもある「絵」本が入るのが順当だが、何を入れてもいいらしい。
さてkashmir先生といえばすでに2作↓を取り上げている。
『〇本の住人』はそれ以前の作品、いわば作者の原点のようなものだ。
1巻発売は2006年、まんがタイムきらら連載で4コマ形式。
掲載誌でもわかるように内容は日常系。主人公が少女で、猫耳やメイドやスク水など一部男性オタクが好みそうな要素が多々登場するのは、のちの『てるみな』に引き継がれている。
ネタはキャラクターごとの趣味嗜好や特徴を生かしたものが多い。兄はプラモ・フィギュア好きなオタクなので二次元系ネタ、小説好きな友人なら怪奇ホラー。金髪ハーフ少女は傍若無人な性格と間違って覚えた日本語録といった感じ。
セリフ一つ一つの濃度は濃すぎず薄すぎず、ちょうどいい塩梅のボケツッコミが心地よい読書を生み出す。
つまり飽きにくいということ。何度でも繰り返し読める良作の証左だ。
ただ問題があるとすればセリフ量の割にさらっと読めてしまうため記憶に残りづらい。脳に刷り込むためにはもう一回読み返さないといけないようだ。
日常系は誰かの日常を覗いているようなもの。ブログやSNSを見るのに似ている。些細な変化が膨大に観察できるので色んなことの参考にできる。興味深い。