69. 『ご注文はうさぎですか?』1~9巻 愉快な店員に会える喫茶店と瀟洒で平和な街
深夜アニメを見るようになって早10年。
ここ数年は1クールにつき1~3本程度しか視聴していない。特に今季アニメは継続してるのは1本のみ。
個人的に漫画や小説以上に新作アニメを見続けるのは体力を使う。
新しい情報を脳に入れることが疲れる感覚があり、気になっても後回しにしたりして観てない作品が山のように増えていく。
共通するのは「面白い」と分かっているからこそわざわざ見なくてもいいかと考えてしまうこと。
その代わり視聴済みの作品を繰り返し見てしまう癖がある。知っているからこそストレスなく目に入れられる。そういって無駄に時間を食いつぶしてしまう。
人間は自分にとって都合いいことしか学習しないなとしみじみ思う。
Koi先生の『ご注文はうさぎですか?』は言わずと知れた作品だろう。
個人的には日常系美少女アニメのパイオニア的存在だと思っている。私はリアルタイムで見ていなかったが、最終話後のネット上で「ごちうさ難民」が発生するくらい話題作だったのは知っていた。
高校入学を機に憧れだった「木組みの街」へ引っ越してきたココア(表紙橙髪)は下宿先の喫茶店「ラビットハウス」の孫娘・チノ(水色髪)と出会う。店の手伝いをしながら学校に通う中で、同じバイト仲間で軍人思考のリゼ(黒髪)や和菓子喫茶「甘兎庵」の孫娘・千夜とその幼馴染・シャロなど愉快な仲間とすぐに打ち解け楽しく暮らす……
本作の優れている点は単に絵柄やキャラクターの可愛さなどではない。細かな設定の充実さだと思う。
舞台となっている木組みの街は西洋の街並みを模している。具体的にどこなのかは私にはわからないが、たとえばパリの中心街よりもう少し下町っぽい雰囲気をした木と石造りの古風な建築だ。外観だけでなく店の内装や年行事もヨーロッパ文化に色濃く影響を受けている。
どうやら作者はヨーロッパ各地を訪れ気になったものを参考にしているらしい。西洋文化が好きなのだろう。食器や家具にもその思いが反映されている。こだわりが詰まっている作品は私も好きだ。
キャラの可愛さも忘れてはいけない。
誰とでもすぐ打ち解けられるココアと独特な感性を持つ千夜は時に周囲を振り回すがいつも人を笑顔にさせる。熱血系のリゼは乙女な一面も持ち合わせるが皆を引っ張る頼れるリーダータイプ。シャロは特に振り回されがちだが努力家でカフェインで酔う体質、チノは中学生だが一番のしっかり者で真面目だったがココアたちと接する中で徐々に変化していく。
他にも登場するメインキャラ達全員がパズルのように組み合わさって完成した世界は刻々と変化していく。和気あいあいとした時間は停滞せず皆の心境も関係性も進化していく。読者がそれを覗かせてもらっているような感覚がある。
どストレートな「きらら4コママンガ」を久しぶりに読んだがやはり面白い。アニメとの微妙なセリフ言い回しや展開の繋ぎの相違も楽しめた。
実は今回読んだ9巻は最新巻ではなく、間もなく11巻が発売される。大判コミックは一冊の読書時間が意外とかかってしまうので駆け足気味に10巻を読み終えたい。