読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

4. 『カノジョも彼女』1~12巻 嫌味ない二股系ラブコメ

「食わず嫌いはやめなさい」

と言われたことは生まれて一度もない気がする。

 

 しかし

 

「読まず嫌いはやめた方がいい」

と自分に言い聞かせるのはしょっちゅうだ。

 

 あらすじを見ないで表紙買いするのはよくあるが、反対に表紙の絵柄がなんとなく好みじゃないと手が伸びないこともたまにある。わずかに見聞きしたあらすじだけで先の展開を勝手に予想し飽きてしまう「これって〇〇と似てるね」と思い読まない……見聞を広め経験を積んで歳を取るごとにそうした拒否が増えていく。

 

 様々な理由はあれど、結局中身を読んでみないことには真に面白味を判断はできない。否定と批判ばかりしていれば”本物”を見分けられないどころか脳が特定思想で凝り固まって、気づけば周囲に誰もいない寂しい人間になってしまう。

 

 

 選り好みせず、まずは手に取る。全ての物事に通ずる一つの真理である。

 

 

カノジョも彼女(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 

 今回の漫画はまさにその教訓を地でいく経験となった。

 

『カノジョも彼女』は超がつくほど真面目な男主人公が長年告白してきた末にOKをもらった幼馴染の彼女がいるにも関わらず、突然告白してきた女生徒のひたむきな姿に惚れて、悩みに悩んだ結果「彼女に話して正々堂々二股させて欲しいと伝える」ことだった……

 

 現実だったら大問題である。

 ただでさえ恋愛関係の不祥事に厳しい目を光らせる世間様がいるのに真面目に二股したいだなんて……しかも色々ありはしたが、一応彼女の許可も得て3人の同棲生活が同日中に始まるのだ。とんでもなさすぎる。

 

 私も不倫や浮気には明確に反対の立場だ。価値基準や浮気のボーダーは人それぞれでいいと思うが相手方が不幸になることはしてはいけないのは当たり前である。

 

 

 と書いてきたが、これらはフィクションだ。実在の団体、人物とは何ら関係がないのだ創作物にいちいち目くじら立てて不毛で的外れな批判というなの罵詈雑言を浴びせるのは発言者のストレス発散以外の何にもならない

 

 ここら辺の問題にあまり首を突っ込むと深度計測不能の泥沼に沈んでしまうのでこのあたりでやめておく。

 

 まとめると過去の私は

「二股がメインテーマの漫画ってあんまり読みたくないなぁ」

と思っていたわけである。

 

 実は著者のヒロユキ先生の過去作は一通り接してきているし、何ならファンである。

 詳しくはいつか書くと思うが、前作のアホガールは突き抜けたアホのヒロインを中心に巻き起こるドタバタ劇が面白かったし、その前のマンガ家さんとアシスタントさんとはアニメを視聴してアシスタントさん役の早見沙織さんは可愛いし、商業デビューのドージンワークの頃からコメディセンスは高い。

 ヒロユキ先生もFate等の二次創作同人を作っており、元々同人誌を描いていた人は総じて画力や作風が決まっているため読みやすい傾向があると思う。

 

 余談だがヒロユキ先生の実姉がBLOODY MONDAY』で知られる漫画家の恵広史だと初めて知り驚いた。勝手に男性作者だとばかり思っていた。

 ペンネームと作風や絵柄で何となく男女を判断しがちだが、『鬼滅の刃』や『いちご100%』のように一部の情報だけでは判断しづらいケースも多い。とりわけ少年誌連載作は難しい。実際問題、作者の性別なんてどうでもよくて、漫画の優劣を決めるのは“面白い”か”面白くない”かの二択だけである。

 

 

 話を戻す。

 他作品はずっとコメディばかりで恋愛要素はおまけだった。そのためヒロユキ=コメディのイメージも強く、表紙からしっかりとしたラブコメの雰囲気を放つ本作は1巻発売から知っていたにも関わらず、ずっと読んでいなかった。

 

 読んだきっかけはアニメだった。

 Amazonプライムの見放題に『カノジョも彼女』のアニメがあるのは知っていて視聴を後回しにしていたのだが、つい先日見放題が間もなく終了すると告知された。

 これはもったいないとすぐに全話を連続視聴した……

 

 結果はこの通り、翌日には11巻まで、その翌週には最新刊12巻を発売すぐ購入していた。

 

 まずアニメが面白かった。後でわかったがストーリーはほぼ原作通りの構成で話が進む。先生お得意の下ネタの使い方は上手いしキャラビジュアルもかわいい。CVは榎木淳弥(『呪術廻戦』虎杖役)、佐倉綾音(『ごちうさ』ココア役)、和気あず未(『ウマ娘スペシャルウィーク役)など人気声優ばかり。さすがの演技力はキャラのイメージ通りで掛け合いもばっちり

 

 二期の製作も決定済みということで先が楽しみである。

 

 アニメ一期後の原作漫画の展開も怒涛の面白さだった。メインヒロインがさらに増えたり、泣ける心理描写がありつつも閑話ではしっかり笑いを取る。

 

 

 こうした話構成を支えるのはだと思う。

 過去作を見ればわかるが、画風がかなり変化している。特にヒロイン、女性キャラの描写は抜群に上手くなっている(逆に男性キャラはあまり変化なし)。もちろん元から画力はちゃんとあるのだが、今作はカラーでもモノクロでもラブコメを描くにあたって著者が一から女性デッサンをやりこんだのでは?と思うくらいに上手い。

 

 著者の漫画にかける想いの熱さが伝わってくる。超がつくほどストレートに真面目な主人公と同じくらいヒロユキ先生も真面目な努力家なんだろうと思う。

 

 

 13巻を楽しみに待っている。