読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

94. 『とくにある日々』1,2巻 自分達の発想と行動がいつだって毎日を特別に変える

 約一か月ほど時間が空いてしまったが、生きています。

 

 読んだら(なるべくすぐ)書くがモットーとは、逆に言えば読まなければ書かないわけで。つまり新作マンガを読んでいなかったのだ。

 

 その理由は金欠と精神的多忙が重なったから。

 余裕が出てきた先週に続巻と新作をいくつか買ったのでまた書いていく。

 

 

 今回は退屈な日常なんて実は誰にも存在しない、そう思わせてくれるマンガ。

 

 

 

とくにある日々(1) (ヒーローズコミックス わいるど)

 

 なか憲人先生の『とくにある日々』

 

 高島黄緑(表紙黄髪)椎木しい(表紙黒髪)は入学すぐに友達になる。何気ない日々が始まると思いきや、彼女らが通う高校の校庭には巨大な……何とも形容しがたい像がそびえていた。

 変な高校には変わった人がいっぱいいた。それは彼女ら2人も含めて。

 

 

 特にないではない。一日一日が特にある

 

 タイトル通りの日常もの。特異なのはフルカラーということ。

 王道の女子高生2人の会話劇でありつつ、他作と類似点を作りながらも一味違う話で面白い。

 

 いつも通りネタバレは避けたいので具体的な内容には触れない

 

 だが魅力を語るには中身を述べなければ文字通り話にならない。

 なので一つだけお気に入りのエピソードを。

 

 高島と椎木はごく普通の会話の中で「カニを見に行こう」となる。

 思いついたのは椎木、だがそれに食いつき行動に移したのは高島だった。

 椎木は思う。「私一人だったら頭の中で考えて、それで終わっていた」

 高島は言う。カニを見に行くだなんて、そんなこと思いつかなかった」

 早速海を目指した2人だったが、歩き出してすぐの道中で店先の水槽にカニを見つけてしまう。これであっけなく目標達成。満足して帰る――なんてできなかった。もう生まれてしまった”海行きたい”の気持ちを消化不良にはできなかった。

 電車に乗り浜辺につく。砂浜にいたスナガニで真に目標も達成。

 それから2人は並んで海に向かって座った。

 夕日が水平線に沈む。

 景色をずっと眺めていた。

 

 

 大人の手前の可能性と子どもの自由さを兼ね備えた高校生らしい思いつきの行動力がテーマの一話。

 妙な思い付きをよくする椎木と考えなしでも動ける高島のコンビがかっちりハマり、互いの良さが全面に出ている。

 

 本作の魅力は主役2人以外にもいくつもある。

 幕間マンガ不良になりたい子シリーズも、悪になりきれない根の良さが出てしまってとっても可愛い

 会話量の差が10倍ある女子2人や学内に不要だが印象深いものを勝手に置く設置部、お嬢様になりたいお嬢様部など。校風らしい自由で緩い部活設立ルールのおかげで多様な部活動が存在している。

 主人公達も活動内容未定の部活を作って、日々様々な思案と実行を繰り返している。

 

 10代の、この3年間にしかできないことを全力でする姿私の郷愁を誘うとともに賑やかだった思い出を回想させてくれる

 ああ、青春とはかくも素晴らしく刹那的な会話の積み重ねだったのだと気づかされた。

 

 

 読めば読むほど今と過去の小さな出来事から頭の隅の妄想まで肯定してくれるような感覚がする。これだから日常マンガはいくつも手に取ってしまう。

 画風も作品にぴったりで軟らか。だからこそ無理なく心の隙間に染み入る。

 

 

 3巻がどうなるか、できることなら難関も続いていつまでも読んでいたい。