読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

25. 『黄色い円盤』 奇想の作者によるぶっ飛んだ神秘的ストーリー

 漫画の中にはジャンル分けが難しいものがある。

 

 たとえばゴールデンカムイのように公式が”闇鍋”と称する作品は多種の要素取り入れているためざっくりと分けるのは困難だ。

 

 

 中には別の理由で区分けが難しいものもある。

 

 独創過ぎるものだ。

 

 

黄色い円盤 (リイドカフェコミックス)

 

 黄島点心先生の『黄色い円盤』ペンネームとタイトル、表紙からしいい意味でヤバい気配がプンプンするが、実際中身は異質で異常で完成された作品になっている。

 

 複数話を収めた短編集で、表題作『黄色い円盤』はある日突然赤道から南北に分ける超高円周壁によって地球は二分される。宇宙から見た地球はまるで輪を従える土星のようで、南半球と北半球の行き来ができなくなった人々が大混乱に陥るSF大作だ。

 

 もう一つ印象的な話がある。タイトルを失念したが、ある男性がまだ赤子の息子を連れて女性の医者にかかった。息子は頭頂部にたんこぶのような膨らみがあり、レントゲンで撮ると肥大した脳の一部が頭蓋の穴から飛び出していた。しかし体に害はないとして経過観察に。これをきっかけに男性と医者の仲が深まるのだが、この医者には密かな野望があり、男性は彼女に息子を誘拐されさらには頭蓋骨を切り開かれてしまい……

 

 こちらはよりホラー味の強い話である。

 両話の共通点は2つの類似形な事物を活かしたネタなことだ。若干ネタバレになるが、地球を分断する円盤は音楽レコードと、脳のひだは腸と似ている点から作者が連想した話だと思われる。

 それらは作者なりの作品内容の重要な理由であり、となる部分なんだと感じた。

 

 

 どちらも私には何時間頭を抱えても思いつくことすらない奇抜な話達でありながら、まとめ方がうまい読者として納得する終わり方をしているのは素晴らしいと思う。

 

 

 よく物語を作る際に掴みとして冒頭が大事だと言われるが、始まりやテーマが面白くても終わり方がつまらない・納得いかないと後味が悪くなり、結果作品への評価も下がってしまう。

 

 特に凝った設定、奇抜なアイデアをメインにした話は広げた展開を回収しきれないパターンがままある。それまで作品を楽しんでいた身としては、この終わり方はあまりに悲しい。ネット等で批判される姿も見たくない。

 

 

 本作はそれらの障害を軽々クリアし完成されている。仏像や宇宙など神秘性を帯びる要素が作品に奇怪な聖性を与え、読めば誰も体験したことのない未知なる世界へ引きずり込んでくれるだろう。

 独自路線を貫いて執筆ができる漫画家は大切な存在だ。時代が違えば『ガロ』で連載を持っていそうな作家である。

 

 

 表紙買いした本作が当たりだったため、すぐに私は別作を購入した。そちらもいずれ取り上げようと思う。

 

 但し、そちらの方がだいぶヤバい