読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

65. 『夜な夜な夜な』1巻 腐敗極める警察に立ち向かうは正義の怪盗一座

 闇夜を駆け、私腹を肥やした悪党から金を奪い貧民にばら撒く。

 義賊といえば日本なら石川五右衛門、西洋なら創作だかアルセーヌ・ルパンが思い浮かぶ。

 

 怪盗は盗みを働くので当然犯罪者だ。現実にいればどんな人格者だろうと逮捕されて法で罰せられる。

 だがしかし、彼らが狙う相手が怪盗なんて比較にならない程の大悪党ならいかがだろう? 果たして罰を受けるべきなのはどちらなんだろうか?

 

 

 

夜な夜な夜な 1 (青騎士コミックス)

 

 柴田康平先生の『夜な夜な夜な』は現代を舞台にしたピカレスクマンガだ。

 

 人が寝静まった夜の箱根町。美術館ひしめくこの町はトップを中心とした警察全体の腐敗により美術品が警察に盗まれ押収されるのが常態化していた。美術館職員たちは強大な権力になすすべなく従うままだった。

 そんな警察組織の魔の手から盗品を盗み返す一団があった。彼らのリーダーは夜名。仲間たちと共に彼女は町を救えるのか……

 

 

 主人公をはじめビジュアルもキャラも良すぎる仲間たち、醜悪で強大な敵との戦い、期待通りかつ期待を裏切ってくれるストーリー

 

 どれも魅力でいっぱいだが、やはり一押しはだ。

 

 美麗な色合いの表紙はもちろん、デジタル全盛の中アナログで描かれた濃密な画面は背景や衣装の細部の描き込みにより荘厳な重厚感をまとっている。また小道具や散らばった物に壁のポスターや街並みなどの”ごちゃごちゃ感”は作品固有の雰囲気を生み出している。

 この余白を許さない描き込みによる微細な画をそのまま表現するために漫画単行本としては珍しい連載誌と同規格のワイド版なので画面が綺麗に読める。こういった点は電子にはない個性といえる。

 

 私は緻密なペン画がとても好きなので、ぐさりと癖に刺さった。実は作者の漫画はこれが初めてでなく、これより前に短期間に3作を手に取っている。いずれここにも書こうと思うがどれも非常に面白かった。

 

 

 

 1巻は敵味方含めたキャラと世界観の紹介といった流れ。2巻からより一層激しく美しい物語が加速していくことだろう。