読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

28. 『夢想のまち』1,2巻 淡く静かな町で暮らしていく

 幼いころからほぼ毎日夢をみている。瞼を閉じる直前に焼き付いた記憶と記録がバラバラになって再構成した世界は一夜だけの幻であり、目が覚めれば光速で失せていく。

 

 

――謎の語りはそのくらいにして。

 ぼんやりと不確かなようでその町には生まれ暮らす人がいる。

 

 今日の作品はそんなマンガである。

 

 

 

夢想のまち 1巻 (FUZコミックス)

 

 夜の羊雲先生、なんて洒落たペンネームをしている。読めるけど不規則系な名前は字面で覚えやすいので好きだ。

 『夢想のまち』は現在2巻まで発売中、たしかコミックFUZ連載なのでweb漫画の一作品になる。

 

 

 あらすじを記述するにも作品内容を言葉にするのが難しいので言えることは少ない。

 

一人の少女(表紙)が港町に引っ越してくる。正確には旅の流れでたどり着いた場所の雰囲気を気に入る。学校に通い始め、好奇心旺盛な主人公はすぐに仲良くなり町の人と交流していく

 

 ざっと文にすればこうなる。しかし本作の良さは読まないとわからない。

 

 ストーリーは日常もの、人間ドラマもの、そしてとある人物に関する謎が時々顔を出す。

 一番の特徴はなんといっても画風である。一言でいえば鉛筆と水彩画のよう。細微な線と柔和な色彩(当然白黒だが)、レオナルド・ダ・ヴィンチが編み出したスフマート=空気遠近法もしくは明治初期の日本画の代表的表現の朦朧体のような、空気さえも描いている印象を受ける。

 

 漫画家には珍しいタイプの画風を持った作者である。

 

 個々の好みはもちろんあるが、本作の持つ空気感は安らぎをもたらしてくれるはず。

 

 

 刊行スピードが遅いので続きはまだ先になってしまうが主人公のように様々な物に興味を持って日々を過ごしていきたい。