32. 『mono』3巻 作者の趣味盛り沢山の部活ものローカルマンガ
私は興味の幅は広いと自負しているが実際は広く浅いため知識も経験量も大したことない。
創作物、とりわけ物語は作者の趣味嗜好が反映されやすいと度々書いてきた。趣味一ネタをメインにした漫画は数多い。
しかし一ネタだけで話を作るのは苦労するだろう。ならば2つ、3つ、4つとネタを増やせばいい。
『ゆるキャン△』で知られるあfろ先生作『mono』はまさに闇鍋的要素てんこ盛りマンガである。
山梨県を舞台に写真部(のち映研と合体)の女子高生たちが駄菓子屋の娘で漫画家と出会い地元を中心にあちこち巡っては写真・動画を撮影していくストーリー。
年一刊行で3巻目。『ゆるキャン△』と同時連載かつ掲載媒体が異なるため発売ペースは遅め。続きを楽しみにしていた。
見どころはまず画。ポップアートのような風景描写でありながら現地の空気感が伝わってくる独特の画風が遺憾なく発揮されている。数多く登場する食べ物もおいしそうで夜中に読むのは推奨しない。
次にキャラがかわいい。この一言に尽きる。特にホラー漫画家の玄熊のキャラデザが好み。
そして取り上げられる題材の多さに驚く。山梨中心という特定の地域を舞台にしているため実在の店舗のグルメや風光明媚な景色などが登場し主人公たちはそこへ出かける。3巻だと表紙のかき氷巡りを3話連続で描いている。グルメと旅以外に映画撮影、写真・動画撮影のためのカメラ話、作中の3人の漫画家の仕事話、ホラー要素、自作キーボードやバイクの話……etc 思わず「へぇ~」となる知識満載。
『ゆるキャン△』にも旅、グルメはキャンプの醍醐味として欠かせない要素。ホラーネタも度々登場するのは作者がホラー映画好きだからだろう。
感覚が自分と近そうで勝手にうれしくなる。モキュメンタリ―ホラー系が特に好きそうだと思った。『パラノーマル・アクティビティ』や『ブレアウィッチ・プロジェクト』などをオマージュしたであろうネタが時折入れられる。
ネタを多く取り入れればマンネリ化を防げる有効な手段となるが、一方で話がバラバラで繋がりの薄いストーリー性に乏しい作品になってしまう。しかし本作はキャラと役割分担が絶妙でゆる~い時間の流れの中で全員が自由に幸せな生活を謳歌している様を見ることができる。あfろ先生のまとめ上手さが顕著にわかる作品に仕上がっている。
4巻が出るのはおそらく来年の秋頃。待ち遠しいがもうすぐ『ゆるキャン△』の新巻が発売なので、とりあえずはそちらを楽しむとしよう。