読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

29. 『まどろみバーメイド』11巻 風変わりなバーテンダーに最高の一杯を。

 実写化されるような職業物のマンガはほぼ手を付けていない。

 

 現実社会の話を読んでもあまり心が躍らない。もちろん例外はあるが、マンガには素晴らしいフィクション世界があるというのにわざわざ日常に近しいものに触れようとは思わないためだ。

 

 現実世界の一光景でありながら全く別世界を感じられるものは、その例外で楽しく読んでいる。

 

 

まどろみバーメイド 11巻 (芳文社コミックス)

 

 表紙の美麗な絵が特徴的な早川パオ先生の『まどろみバーメイド』の最新11巻を発売すぐに読んだ。

 

 主人公(表紙)は屋台を牽いて移動式のバーを営むという変わった人物。さらにメニューも定番は勿論、客の好みや要望に合わせたオリジナルカクテルを提供する実力派。彼女が同居するバーテン仲間の友人たちや様々な客、ライバルを通して成長するバーテンダードラマ。

 

 簡単に主人公の成長物語と言ってしまったが、厳密には一言ではまとめられないほど複雑な人間模様が描かれている。大きな見どころは各キャラがそのストーリーを通してどう心理変化し成長するかである。読んでいて感情移入するあまり私まで苦しくなる場面もある。

 いくつかの長編に分かれており主人公以外にも友人キャラがメインの編がいくつかあり、話によっては主人公の出番が全くないこともある。

 

 

 もう一つの見どころはやはり作中に登場する多種多様なカクテルだ。

 

 私自身お酒を飲む頻度は月1程度、ましてやバー経験なんて1,2回のみ。一般にもバーはちょっぴり敷居の高いお店で一人で入りにくいシステムが分からないなどのイメージが多いのではないだろうか。

 

 そんな人でも本作を読めばバーとバーテンダーに対する印象が変わるはずだ。閑話やあとがきの作者コラムには初心者向けバーの楽しみ方が書いてあるので参考になるし、作中カクテルのレシピと自宅での作り方が載っていたり、バーに対する敷居を下げて広げる努力がなされている。

 

 作中のオリジナルカクテルは協力店のバーテンダーに取材・考案・引用されたものなので味は保障されている。バーテンの各種テクニックやお酒の解説、バー文化の歴史など関連するあらゆる要素が詰め込まれた、バー好きもそうでない人も楽しめる作品に昇華されている。

 

 あと毎度のことながらキャラが非常に綺麗で可愛い。さらに、あえて何とは言わないがキャラデザを見れば作者のタイプが分かる。「早川先生はこういう女性が好きなのかな」と思ってしまう。

 

 

 

 私としては珍しく人に勧められて読んだ漫画でもある。自分で面白い漫画を見つけたいという謎気概が邪魔してオススメのまま読めない。

 

 本作は友人から当時発売されていた全巻をプレゼントされたのでありがたく読ませてもらった。友人のセンスはさすがでハズレなし、しっかり面白かった。

 

 

 同時に頂いた漫画がもう一つあるのでそちらもいつか書こうと思う。