読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

37. 『魔王様ちょっとそれとって!!』1~8巻完結 テンポ良い掛け合いの魔王&魔法使い一行の協同生活

 コメディマンガにおいて私が注目しやすいのは”ツッコミ”の存在。

 

 鋭利なワードセンス光る言葉が笑いを大きくする。人間通しの掛け合いである漫才と比べて、漫画は読者の読む速度とテンポによって印象が変わる。

 

 それらを無視しても笑える漫画は素晴らしい

 

 

 

魔王様ちょっとそれとって!! 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

 コメディ作は大好きで繰り返し読んでしまう。中でもお気に入りの一作と同じ作者・春野友矢先生が他誌で同時連載していた魔王様ちょっとそれとって!!は最初に言ってしまうが非常に面白かった

 

 

 舞台は長年の封印から復活した魔王が再封印された”檻”の中。力を失った魔王(表紙女子)は一緒に封印されてしまったかつての敵、魔法使い・勇者・武道家たちとともに脱出まで協同生活を送ることになる。しかし幼少より甘やかされて育った魔王には得意なことが何もなく弄られまくる日々……

 

 

 よくあるRPG的ファンタジー世界をベースに他作品とは異なる視点の切り口で繰り広げられるボケ&ツッコミは私のツボにはまった。全巻読み終えて、そのまま1巻に戻ってもう一周読み直したほどだ。

 

 ボケツッコミのテンポの良さ、勢いよくツッコむ時のワードチョイス、世界観・設定の使い方が絶妙でさすが先生だなと思った。

 

 主人公の魔法使い一行は料理上手な勇者、果物大好きっ子の武道家、臆病な屈強ボディの荷物持ち、はぐれたままの武闘派僧侶という代表的なジョブで構成されたパーティをアレンジしたもの。

 

 終盤で明かされる魔王の力の真の意味や魔法使いの出自の秘密などストーリー伏線もしっかり張られている。現在話の3話に1話に回想話挟んでいる展開も読者を飽きさせない作りになっている。

 

 8巻で完結なのがもったいないくらいに思ってしまったが、6巻辺りから話のまとめに入っている風だったので作者の中で丁度いい長さだったのかもしれない。

 

 コメディ・ギャグ漫画は作者の努力と続け方によっては半永久的に続けられる。40年以上連載した『こち亀』のような例もあるわけで、大好きな作品がまだまだ読めるのは読者にとって幸せに違いない。

 

 けれど一貫したストーリーがあるのなら、いずれ終わりを迎えるのが宿命だ。本作は2018年に完結しているのをつい最近知ったので当時知らなかったのを悔やんだ。アンテナは常に張っていないとダメだなと思う。

 

 

 本作はウルトラジャンプからのヤングジャンプ連載、つまり集英社だ。作者のもう一作はアライブ連載なのでKADOKAWAになる。全くの他社にも関わらず、本作の巻末にはKADOKAWAの方の宣伝漫画が載っていた。

 

 昔、20年以上前の漫画なら同じ作者のものだとしても他誌漫画の宣伝を掲載するなんてありえなかった(と思う)。

 

 それが近年は同作者なら他誌の作品でも宣伝したり作中にネタとして取り上げられたり、他誌に連載を持つ漫画家が帯文やイラスト寄稿するなど割と自由になった印象を受ける

 

 

 出版不況と言われる時代において恐らく最も売れている漫画業界が、会社・漫画家が互いを支えあってさらに発展していければなと強く思う。