読んだら書くだけの存在

漫画や本を読んだ後の個人的感想の記録

13.『クレイジーフードトラック』1~3巻完結 ハリウッド感溢れる近未来グルメ漫画

 漫画界には多種のジャンルが存在する。バトル、ラブコメ、ギャグ、スポーツ、ホラー、歴史……etc. 細分化すれば100はあるかもしれないが、昔から人気なものに”グルメ”がある。一般に知られる有名作・長編作も数多い。

 

 私は色々と読むほうだと自負しているのだが、実際は手に取る作品にかなり偏りがある。歴史・スポーツはほぼ読んでいない。グルメ漫画も少し前までそうだった。

 

 今はいくつか読んでいるが、その中でも最も最近読んだのが本作である。

 

 

 

クレイジーフードトラック 1巻: バンチコミックス

 

 

 大柿ロクロウ先生の『クレイジーフードトラック』は全3巻で読みやすい。

 

 荒廃した世界をひた走る謎のフードトラックとその店主=イケおじが偶然出会った褐色肌の裸の少女とともに大国の軍に狙われるはめに。その危険な逃走劇の最中でも人の腹は減るものだ。彼らは行く先々で食材を調達してはご機嫌な鼻歌交じりで調理して食す。たまに客に売ったりする。行き当たりばったりな凸凹コンビの終末グルメ漫画

 

 

 「終末」と書いたが、ひたすら広がる砂漠と荒野の雰囲気が『マッドマックス』的世紀末な世界観というだけで、人は普通に各地で暮らしている。ただ国同士の争いとそれに伴い悪化した治安のせいで不安定な生活を余儀なくされている、そんな状況だ。

 

 作者もあとがきで述べているが、カッコいいおじさんや自由奔放な女子と美味い食べ物、荒野を走るトラックに武装兵器など好きな要素を盛りだくさんに詰め込んだ漫画なのが伝わってくる。

 私もトラックから武器が出てきたり、おじさんがめっちゃ強いのが判明するシーンは大好きだ。少年スイッチが押されてわくわくが止まらない。 

 

 やはり作品は作者の”好き”をとことん投げ入れ煮詰めたようなものが面白い。作者が嫌いなのに読者が好きになるわけないとも思う。楽しく描いてこそ魅力に変わる

 まあ楽しいだけで作品が完成するわけではないし、苦しんで苦しんで汗水垂らし血を吐き心を病んで創りあがったモノにも確かな価値が生まれるのは全肯定する。

 

 それでもやっぱり、その人の好きを見たいから様々な作品に触れたいのだと私は思う。

 

 絵画や彫刻や音楽も含めた芸術を鑑賞したり、映画や小説に触れて心動かされたり、漫画を読んで自己の喜怒哀楽をぐちゃぐちゃにしたりする理由の一つは、他人の好みを理解したい本心の表れなのかもしれない。

 

 

 そんな私も好きな本作をもっと長編で読みたかった気持ちはもちろんある。どんな漫画にだってその思いはある。しかし現実には問題が山積みだ。連載するのはビジネスでありお金が絡んだ会社の問題でもあるから人情で動かせるものではない。

 

 作品の最後はいかにも男女が主人公の映画的結末を迎える。それはベタだが、それ以上に良い終わりを表現できるものはないから皆に馴染みある王道になるのだ。

 2人の旅の結末はそれぞれが読んでほしいが、私は心のどこかでこの終わりを予見していた気もする

 

 ――悲しいのではない、これでいい。これしかないのだ

 

 

 ちなみに触れていなかったが登場する料理も美味そう。架空の生物から得た食材で移動販売だからこその手軽に食べれる現実的なメニューを作るのだが、夜中に見てると腹が減る。

 

 

 私も仲間と気ままに美味いものを食べる車生活を送ってみたくなった。

 

 こんな漫画をまた探して読んでみたくなる。