64. 『好き好きだいちゅきつよつよソード』1巻 おかしな剣と庇護欲煽る勇者とポンコツ王女
異世界モノといえば、剣と魔法と勇者と魔王の四大要素が欠かせないイメージがある。
ラノベの一大ジャンルになる前、これらは主に『ドラクエ』や『FF』に代表されるRPGの王道世界観だったと思う。
なのでこの要素をメインテーマにする作品をジャンルで呼称する時、「異世界モノ」と言えばいいのか「RPGモノ」と言えばいいのかわからない。異世界モノは色んな世界観があるしRPGも同様だ。
何かいい呼び方があれば教えて欲しい。ふとそう思った。
今回はノッツ先生の『好き好きだいちゅきつよつよソード』だ。
いきなり何言ってんだと思うが表紙を見てもらえれば分かるようにこれが正式名称だ。由来は作中の重要アイテムであり話の軸でもある妙な剣。
王国は未曾有の危機に陥っていた。付近にある洞窟ダンジョンに潜む呪術師の呪いにより国民が高齢者から徐々に”鉄化”するという前代未聞の状況だ。国王は鉄化し、国政は娘の王女が担うことに。彼女が下した判断は、「所有者に向けられた好意によって強化される剣」=「好き好きだいちゅきつよつよソード」を1人の若い戦士に託してダンジョン攻略させること。
しかし彼女が選んだ彼はやる気あれど新米で弱々しい青年。ならなぜ彼なのか?
それは王女が彼のことが大好きだからだった……
王女、戦士、ヒーラー、剣と魔法、ダンジョンなど王道中の王道的冒険もののキーワードと世界観。慣れ親しんだ読者は一ページ目から違和感なく作品に入り込める。
中身はテンポ良い恋愛下ネタRPGコメディといった様子で非常に私の好みに刺さった。
好意を受けると強くなる剣の設定を活かしつつ、純粋無垢で一生懸命な戦士=ショタを狂う程大好きな王女や幼馴染のヒーラーなどの暴走っぷりを真面目な女近衛兵がツッコむのが基本構造だ。
良い意味で頭がぶっ飛んだキャラが適度に配置されていると話が上手く転がっていくのだと再認識させられる。
一般青年漫画と比較してページ数はそこまで多くないが、文字数が多いのか読み応えはしっかりしている。かといって画面が見にくくなるわけでなく、ボケの量も比例して面白さが増している。
呪術師の正体と目的、ダンジョンの強敵・四天王の存在やさらなる「好き好き~」シリーズの装備など気になる展開がまだ待っている。
1巻が去年の夏発売なので2巻も今年の同時期くらい刊行だろうか。先が長い。既に2回読み返しているが、もう数回は再読するだろう。