18. 『JUKE BOX』 確かな画力で紡がれる胸熱展開満載の短編集
CD文化が廃れつつある今は「ジャケ買い」という言葉はすでに死語かもしれない。
ただ「表紙買い」は今も広く使われている、と勝手に思っている。
短編集をキーワードに何かいい作品がないか探しているとき出会ったのが本作である。
設楽清人先生は前回と同じく初めて触れる漫画家だ。
事前情報も全くなかったため完全に「表紙」と「短編集」だけで購入した。
漫画家としてはまだ新人の部類だと思うが表紙を見ただけで画力のレベルがよくわかる。なかなか細部まで描き込んであるし色塗り良い。少女・ロボット・宇宙人など質感の描き分けもよくできている。期待が高まる。
一話のページ数は他の短編集と比べても多いと思う。雑誌掲載の読み切り作品といった形式で実際各誌に載っていたものをまとめたものになっている。
落ちこぼれが大切なものを守るために秘めたる力を覚醒させたり、不器用だけど心に一本の芯が通った主人公だったり、王道的胸熱展開の話ばかりでジャンプで育ってきた
身としてはガッツリ心を掴まれた。
はじめ表紙の少女の顔を見た時は村田蓮爾先生に影響を受けたのかなと思ったが、思い出せないだけでもっと似た雰囲気の絵柄の人がいた気もする。…………どれだけ考えても出てこないので、気のせいかもしれないが。
丸っこい可愛い顔のヒロインと比較して鋭い顔のヒーローが際立つ派手なバトル漫画が作者の趣向だと感じた。表紙の少女が登場するシーサーの話や臆病メガネ女子が活躍する話、”かぐや姫”を連れ帰りに来た幼馴染コンビの話は特にその要素が強い。
個人的に各話の面白さは僅差で、どれもジーンと来る話だったが、特にシーサーの話が目頭にきた。
10年前だったら泣かなかったのに、大粒でボロボロ泣くことは未だにないものの5,6年前からずいぶん涙もろくなってしまった。ただし人前では泣けない。
油断していると短編でもグッと来てしまうので気を付けないとアップダウンが激しいと感情が疲れてしまう。
適度に感情移入しながら楽しみたいものだ。