87. 『ホッピントッピン』 作者の真骨頂バイオレンス短編集
たびたび取り上げる短編集は同作者の多ジャンルを読める点が優れている。
デビュー前の作品から連載の合間に描いた毛色の異なる意欲作など、その広い可能性を感じ、「次はどんな話が来るんだろう」とワクワクさせてくれる。
我が家にも約20冊の短編集があるが、知らない作者でも見かけたらついつい買ってしまう。
カヅホ先生の『ホッピントッピン』は色濃い作風が遺憾なく発揮された良作だ。
SF・ホラー・スプラッター……作者が持てる全ての知識と趣向を詰め込んだ各話。
漫画家活動初期のものに始まり、同人作品も収録。
全般に共通するのはやはり暴力性
――というと誤解がありそうだが、『キルミーベイベー』や『カガクチョップ』にもみられる共通する作風がバイオレンスなのだ。
本作の1話目『R.R.R』は表紙にもなっているウサギっ子2人の短編。宇宙船で自家製モチを売っているが人気が無くぜんぜん売れない。
落とした携帯を盗んだ人に制裁を加えるため自爆機能をつけてる話。
人食い雪男を探しに来た教授と助手の話。作者の漫画に珍しく男性が登場する。
古代エジプトでミイラづくりをしていた女性が数千年後に復活したらラーメンを食べたいという王を案内するために自らもミイラ化して復活する話。
献血を呼びかける吸血鬼の話。
堅物茶道部員が3人のJKに振り回される雑誌掲載作。などなど
巻末コメによれば時勢を鑑みて収録しなかった話もいくつかあるらしい。全方位配慮は必要だとはいえ、斯くも一方には酷な結果を生み出す。
まぁいずれも可愛い女子キャラが躍動するのは血と暴力の飛び交う無法地帯。高低差激しいそのギャップこそ作者の真骨頂。
一話一話のページ数は少ないがその分多様性でカバー。ファンなら満足感を、初心者ならストーリーのパンチの強さを読後に感じられるだろう。
『キルミー』の刊行スピードが年1なので本作の発売は予想しておらず嬉しい誤算となった。
一貫したキャラと世界観が面白いのはもちろん、やはり千差ある短編にこそ作者の中身が濃厚に繁栄されると再認識した。