73. 『アナモルフォシスの冥獣』 理外の作者のトリックに翻弄される
デスゲームものが流行り出したのはいつだったかと考えれば、あくまで個人的な回想に過ぎないが『GANTZ』実写映画が公開された2011年前後じゃないかと思う。
以降『神さまの言うとおり』(2011年3月号)『リアルアカウント』(2014年2月号)『ハカイジュウ』(2010年5月号)『魔法少女・オブ・ジ・エンド』(2012年7月号)、少しとんで『約束のネバーランド』(2016年35号)、漫画じゃないが『ダンガンロンパ』の第一作も2010年後半発売だ。
いくつも挙げたがジャンルとして”デス”ゲームと括っていても死ぬとは限らない。定義は「何らかの理由により逃れられない空間・状況に追い込まれた人達の生存ドラマ」とすれば、たとえば『カイジ』『ライアーゲーム』などの頭脳系ギャンブルマンガも広義のデスゲームに入ると私は思っている。
というわけで今回の作品は死が迫る真のデスゲームだ。
駕籠真太郎先生の『アナモルフォシスの冥獣』
知る人なら作者の名前を見ればある程度内容が計り知れるだろう。少女とグロの融合を得意とする奇想の漫画家だ。
とある富豪が開催する実験的ゲームに招待された数名の男女。ゲームとは実際の殺人事件現場を完璧に再現した空間に降霊術を行い被害者の霊を呼び出す。参加者はそこで数日間過ごせれば莫大な賞金を得られる。噂では過去に死人が出ている本物の霊障があるとされる。今回の空間には大規模な架空の街のミニチュアジオラマが作られていた。霊は現れるのか、参加者は無事に過ごせるのか、謎渦巻くゲームが始まる……
「アナモルフォシス」とは歪んだ画像に円筒形の鏡や錯視を利用して正しい画を見せる技法のこと。
このタイトルが非常に重要で、読み初めにはまったく気にしていなかった私も読後に衝撃を受けた。いや当然中身のオチにも感嘆してしまった。
タイトル含めよく練られた伏線と恐らくマンガという表現媒体でしか実現できないだあろうネタ・トリックのアイデア。いつどうやって思いついたのか、嫉妬と尊敬の念が尽きない。
2視点の話の組み方も良い。過去の事件を振り返るゲーム外の人物らと疑心暗鬼の中で生き残りたいと願う参加者たち。あの世から怨恨を胸に携えてやってくるのはまさしく獣の如き人間……
ネタバレを避けたいがあまり、内容についてほとんど語れないのが残念だ。
ぜひとも、オチを自らの目で確かめて欲しい。ただし10年以上前の発売のため紙の新品は手に入りづらいと思われる。