81. 『+チック姉さん』22巻 オカルト・化物・変人祭りなぶっ飛び漫画
テレビを中心に昨今声高に叫ばれるコンプライアンス。
時代にそぐわない表現は削がれ除去され、やがて全てが消えていくのだろうか。
その荒波はメディアだけに留まらず漫画・アニメ・小説・映画などあらゆる表現媒体に押し寄せている。表現の自由がいつまで持つのか、絶対に守らなければならないラインをいかに維持し続けるのか……
課題は決して少なくないが、作者が自由奔放に作品を作っている間は安心していいだろう。
栗井茶先生の『+チック姉さん』は良い意味でイカレた漫画の鏡だ。
あらすじなんてあってないようなものなので、ごく簡潔に述べるとしよう。
THE高校に通う源間色絵こと通称姉さんは、模型部部長として後輩部員・オカッパとマキマキと弄り弄られ暴言と暴力飛び交う日々を過ごしている。周囲の生徒も街の住民もまともな人とヤバい人の温度差が異常。高校生と市民の闇鍋コメディ。
なんとなく以前に取り上げたことがあると勝手に思い込んでいたがそんなことはなかった。
あらすじには模型部のことを書いたが、途中から模型部でもなくなった。
彼女ら3人がメインだった話もいつしかクラスメイト、他校生、市民、果ては怪異や化物など見事な混沌の態を成してきた。未読の方には「なんで怪異とか出てくるの?」と言われるだろう。初期から巨人レベルの学生とか戦車模型から軍人のおっさんが出てきたり、ファンタジー要素は垣間見えていた。
22巻はそういった最近の傾向の延長線上、新たな怪異の登場と既出キャラの続編、さらなる変人の登場がメインだった。
その全てが倫理的にアウト、コンプラ上等なフィクションならではの濃厚すぎるキャラクターとなっている。
下ネタ・犯罪・暴言暴力のオンパレード。けれど間違いなくセンスは良い。
加えて、このタイプの漫画にしては女子キャラが可愛い。真顔の表情やスタイルなど、作者の好みと私の好みが近いのだと思うが、年々タッチが変化している中で可愛さも増している。
ここで語れる面白さには限界があるため詳細は直接読んでほしい。確実に人を選ぶが、刺されば中毒性がある。
本作を読み始めて数年経つが、ネタが尽きる気配がないほど毎話多様な展開がなされる。
刊行スピードも比較的早いのも嬉しい。
できることならずっと読んでいたい、そう思わされる一作だ。