84. 『まちカドまぞく』1~6巻 優しき心で皆を救う魔族の少女の成長譚
陰と陽、光と闇、善と悪、聖と邪……
相反する物の組み合わせ。二体一対は相殺しあうことで平衡を保っている。
どちらか一方が強大でも脆弱でも成り立たない、曖昧で不安定な関係性はゆらゆら揺れて行ったり来たりしながら、けれど確かに硬く頑丈な絆となっていく。
今日のマンガはそんな物語。
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83. 『アナーキー・イン・ザ・JK』 無秩序な会話が一度きりの青春を形作る
青春に良いイメージがあるかは人それぞれだろう。部活や友情を育んだ人と人と関わるのが苦手で鬱屈した日々を過ごした人もいる。
周囲全てを無視して熱中できるものがあれば別として、学生時代の思い出とはどんな友人がいたかに左右されると思う。
良い相互作用を与えられる関係さえあれば、余計なものはいらないのだ。
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82. 『大科学少女』上下巻 あらゆる理系を楽しみ学べる部活漫画
一番学生に人気のある教科は何だろうか?
現役生には主要五教科のいずれかよりは副教科の方が好かれそうだ。
けれど体育は運動嫌いの子がいる。美術は絵が苦手な人もいる。音楽は音痴な人には苦痛かもしれない。家庭科も技術も、得意不得意を考慮すれば好きでない人もいる。
これが一番、は決められないかもしれないけれど苦手でも嫌いでも、案外些細ななきっかけで好きになるかもしれない。
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80. 『スペシャル』1~4巻完結 異常が常の平穏の影に蔓延る不穏
世に名作映画は数あれど、鑑賞後に放心してしまった映画は少ない。
大して多くない映画遍歴を振り返って、5本あるかないか。衝撃度か感動が高いエンディングに絞られる。一般にも知られた作品ばかりだ。
漫画になるともっと少ない、気がする。
それは単に私が読んできたジャンルによるかもしれない。しかし感動しただけでは、期待を良い意味で裏切られただけでは、最良の読後感は得られない。
今回は久しぶりに素晴らしい読後感を味わった。
なるべく核心には触れないように話を進めるが、一部ネタバレがあるかと思うのでご了承ください。
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77. 『ゆ→あい』1~3巻完結 ゆーじょう以上れんあい未満な高校生たち
まっすぐ一途な気持ちで人を好きになったのは幼稚園が最初だったと記憶している。
6歳という幼児の感情なんて、と思われるかもしれないがその後小学5年生頃まで同じ人を好きだった事実は自分でも純粋だったなぁと回想してしまう。
「誰しも」と一括りに語ってしまえば、どこからともなくうるさい方々がすっ飛んできそうなのでやめておこう。一定数の人は10代の内に初恋を経験すると思う。恋人と数年間過ごした楽しい時間も甘く切ない片思いも、振り返れば青春の1ページになっているだろう。
胸に秘めた想いを打ち明けられず、今も後悔する人もいるだろうが中には友達以上恋人未満な関係がもどかしくも心地よかった人もいたかもしれない。
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75. 『黄色い耳((胎教))』 ギャルと異形の新生物による生命の奇跡
我々人類にとって耳とはどんな存在か、考えたことはあるだろうか?
私はもちろん……考えたことがなかった。
広範囲の音を聞くために必要な身体部位であるだけじゃなく、形の違いから個人の識別もできるかもしれない。注目して見てみると十人十色、千差万別で、耳以外にあからさまな個性が出る部位は少ないとすら思える。
五感のうち聴覚を司り「馬の耳に念仏」や「壁に耳あり障子に目あり」などことわざや慣用句でも使われやすい文化的にも影響がある耳。
もし耳をテーマに漫画を描いたらどんな話になるだろう?
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